入口から階段を降りていくと,アーチ型の天井を持つ小さな埋葬室に出ます。埋葬室に通じる小さな入口は,本来,豪華な装飾のある木製の扉でふさがれていましたが,その扉はエジプト文明博物館に展示されています。この墓の壁画は,もっとも保存状態がよいものの一つです。
埋葬室入口の通路の天井には,地平線の太陽を支えるヌゥトの腕が描かれています。肩の両側に地平線を表す山が描かれているようですが,現在は保護ガラスの上に砂が積もり,ほとんど見ることができません。壁にもライオンなどが書かれていますが,ほとんど見えません。
入って右奥には4段にわたって,センネジェムが妻のイイネフェルティとともに,イアルの野で農作業にいそしむ姿が描かれています。イアルの野は来世の魔法の世界で,天の川(地上のナイルを置き換えたもの)が流れ,イチジクやヤシといった多数の果樹がたわわに実をつけ,花々が咲き乱れています。その上段では,センネジェムとイイネフェルティがラー,オシリス,プタハを礼拝している姿があり,彼らのうしろには,幼くして死んだセンネジェムの息子がパピルスの船に乗っています。またそのうしろでは,神官が開口の儀式を行っています。
この壁の上部にある半円壁面には,ラーの船を礼拝する2頭のヒヒが描かれています。隣の壁,入口と奥壁のあいだには,センネジェム夫妻がオシリスの王国の門の番人たちを礼拝している様子があります。
入口の反対側の壁面には,センネジェムがオシリスの王国に入るところを描いた3つの場面が配置されています。最初の場面では,ジャッカルの頭で人の姿のアヌビスが,センネジェムを死後の世界へ導いています。第2の場面では,天蓋の中で両側にウジャトの目と首をはねた動物を象ったオシリスの象徴とともに立つオシリスの前で礼拝するセンネジェムの姿があります。第3の場面では,アヌビスがライオンを象った埋葬用寝台の上のセンネジェムのミイラを祝福し,付属の文章では『死者の書』の数節が引用されています。
入って左奥の壁では,センネジェムとイイネフェルティが様々な葬祭の神を礼拝しており,半円壁面は,塔門型厨子の上に腹ばいになったアヌビスの二つの像で飾られています。
その隣の壁は,2段に分けて,死者の縁者と父親に神酒を捧げる子どもたち,および鳶の姿のイシスとネフティスに守られたセンネジェムのミイラの像が描かれています。
天井は,文章の書かれた白い帯が1本縦方向に,3本の帯が横方向に走っているため,四つの四角形からなる二つのグループに分けられています。一つ目のグループでは,死者がトト,ラー=ホルアクティ,アトゥムを含む様々な神と数人の葬祭の精霊を礼拝しています。二つ目のグループでは,まずイチジクの女神が死者とその妻にパンと水を差し出しています。イチジクは天の樹木で,死者の保護者として,ヌゥト女神の姿で描かれます。次の場面では,センネジェム夫妻が上部に太陽と星をいただいた天の神々を礼拝しています。次に,ラーの魂を擬人化したベヌウ鳥が,ラー=ホルアクティとヘリオポリス九神とともに描かれ,最後にセンネジェムがオシリスの王国である西方の門を開けています。
案内板
入口
埋葬室へ続く階段
センネジェムの墓の埋葬室を閉ざしていた木製の扉 (エジプト文明博物館蔵)
地平線の太陽を支えるヌゥトの腕
入口通路 ヘリオポリスのねこ
埋葬室右 イアル野の風景
イアルの野での農作業
天の川とイチジクやヤシなどの果樹,花
イアル野の花々
ラー,オシリス,プタハを礼拝
パピルスの船に乗るセンネジェムの息子
開口の儀式を行う神官
ラーの船を礼拝する2頭のヒヒ
埋葬室左
オシリスの王国の門の番人たちを礼拝するセンネジェム夫妻
センネジェムを死後の世界へ導くアヌビス
天蓋の下のオシリス
センネジェムのミイラを祝福するアヌビス
様々な葬祭の神を礼拝するセンネジェム夫妻
鳶の姿のイシスとネフティスに守られたセンネジェムのミイラ
様々な神と数人の葬祭の精霊を礼拝するセンネジェム
パンと水を差し出すイチジクの女神
太陽と星をいただいた天の神々を礼拝するセンネジェム夫妻
ラーの魂を擬人化したベヌウ鳥とラー=ホルアクティとヘリオポリス九神
オシリスの王国である西方の門を開けるセンネジェム
名前