マルカタ王宮址 Malkata

 メディネト・ハブの南西部を占める広大な地域に,マルカタ王宮址があります。新王国時代第18王朝最盛期の王,アメンヘテプ3世は,本来ならば死者の地であるナイル川西岸に居を構えました。マルカタとはアラビア語で,「物を拾うことができる場所」を意味します。  この地は,現在のバーラート村の西側に位置し,今も活動を続けているコプト教のデイル・アル=ムハリブ修道院も王宮址のなかに存在しています。「魚の丘」…

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マルカタ南/魚の丘遺跡 Malkata-South/The Hill of Fish (Kom-el Samak)

 イシス神殿の北方250mに位置する「魚の丘」(コム・アル=サマック)の発掘は,早稲田隊による1974年1月からの第3次マルカタ南遺跡発掘調査において開始され,彩色階段が発見されました。幅3.5m,奥行き55cm,高さ5cm,踏面に捕虜と「不戦の弓」の絵が交互に描かれているこの階段の発見は,世界的なニュースとなりました。第4次調査では,この建物址が新王国時代第18王朝のファラオ,アメンヘテプ3世…

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メムノンの巨像 Colossi of Memnon

 考古局事務所の東にある2体の巨像。 アメンヘテプ3世の座像で,王の葬祭殿入口前に置かれていましたが,第19王朝メルエンプタハ王が,神殿の石材を自らの葬祭殿建設のために持ち去った後,この像だけが残りました。  高さ2.3mの台座の上に高さ15.6mの 像が置かれています。創建時には,頭上に王冠を載せていたので,全体の高さは約 22mでした。石材の珪岩は,カイロの東方にあるゲベル・アル=アハマル…

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アメンヘテプ3世葬祭殿 Mortuary Temple of Amenhethep III

 メディネト・ハブの数百メートル北,ナイルを挟んでルクソール神殿のほぼ対岸に位置するコム・エル=ヒタンに,アメンヘテプ3世の葬祭殿がありました。これはその当時,テーベ西岸に造営された最大の神殿でした。かつて威容を誇ったこの大建造物をしのばせるものは,メムノンの巨像のみとなっていましたが,2014年に,北西端のプタハ=ソカル=オシリス神殿の一部である,アメンヘテプ3世の巨大な立像が復元公開され,葬…

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アメンヘテプ3世の立像 Amenhethep III statues

 チケットオフィスから北へ少し進むと,右手にメルエンプタハ葬祭殿が現れてきます。  その隣の空き地に立っているのが,アメンヘテプ3世の2体の立像です。この付近は,アメンヘテプ3世葬祭殿北の端に位置しており,地中から発掘された立像のかけらを復元したものが2014年に復元・公開されました。何世紀にもわたって放置され,水の浸食や塩害,破壊行為に脅かされていたこの2体の立像を,ステンレス鋼やエポキシな…

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シプタハと女王タウセルトの葬祭殿 Mortuary Temple of Siptah/ Tausert

 トトメス4世とメルエンプタハの葬祭殿の中間に, 第19王朝のファラオ,シプタハと女王タウセルトの葬祭殿の遺構があります。この建造物についてはほとんど何も判明しておらず,ここで発見されている遺物は,主に壺の断片と石やファイアンスの小さな銘板のみとなっています。

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トトメス4世葬祭殿 Ⅿortuary Temple of Tothmesis Ⅳ

 ラメセウムの敷地のすぐ南西にはトトメス4世の葬祭殿が建てられました。この葬祭殿は二つの塔門の内側にそれぞれ狭い中庭があり,角柱と円柱が一列ずつ並ぶ前廊に続いて,列柱中庭が設けられ,広間と至聖所,そしてそれに関連するいくつかの部屋へと通じていました。  トトメス4世葬祭殿の構造は,トトメス4世の後継者であるアメンヘテプ3 世よって造営された神殿,王の葬祭殿やルクソール神殿中心部分の原型となった…

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ウァジメス葬祭殿 Ⅿortuary Temple of Wadjmose

 ラメセウムとトトメス4世葬祭殿の間にある小神殿は,第18王朝時代,トトメス1世の王子のひとりであったウァジメスのために造営されました。ウァジメスの母については諸説ありますが,王妃アハメスであれば,ハトシェプストの同母兄弟,ムトネフレトが母であれば,トトメス2世の同母兄弟となります。アル=カブのパヘリの墓(EK3)では,パヘリの膝の上に座っているウァジメスの姿を見ることができます。パヘリは王子た…

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白い王妃の礼拝堂 Chapel of the White Queen

 アメンへテプ2世葬祭殿の西,ラメセウムの周壁のすぐ外側で発掘された礼拝堂の遺構では,ラメセス2世の王女であり王妃でもあったメリトアメンを「ムトのシストラム演奏者」,「ホルスの踊り手」として表現した淡白色石灰岩の胸像が発見され,それがこの礼拝堂の呼び名の由来となっています。 「白い王妃」メリトアメン像(カイロ博物館蔵)

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アメンへテプ2世葬祭殿 Ⅿortuary Temple of Amenhetep II

 アメンへテプ2世葬祭殿は,ラメセウムのすぐ北にあり,今も調査と修復が行われています。この葬祭殿は列柱式の前廊で四面を囲まれた中庭を持っていました。早い時期に石材を奪われてしまったようですが,アメンへテプ2世の少なくとも26年間という治世からするとそれほど大きな規模を持つものではありませんでした。この葬祭殿からは,鎮壇具の銘板が発見されています。  発掘と修復が施され,基礎部分は確認できるよう…

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